6.胃癌の手術  胃癌の手術の目的は以下の3つです。
  癌病巣の切除
  リンパ節郭清
  切除後の再建


6−1.癌病巣の切除
 部分的な胃切除(胃切除術・亜全摘術)または胃全体の切除(胃全摘術)が一般的です。切除する範囲は癌の場所、広がり、その進行度によって決まります。胃の上側(噴門側)にできたものは噴門側胃切除が行われます(図3)。噴門を含め胃の上部1/2から2/3を切除します。胃の下側(幽門側)にできたものは幽門側胃切除が行われます(図4)。幽門を含めて胃の下側1/2から2/3を切除します。胃の中心部にできたものや、広い病変または二つ以上の病変があるときには胃全摘術が行われます(図5)。胃全摘術では噴門、幽門を含めて胃を全部切除します。
QOL(生活の質)の向上を目的とした縮小手術もあります。縮小手術には、幽門保存胃切除(図6)、などがあり、病変の状態により適応を決めています。


(図3)幽門側胃切除術
(図4)胃全摘術
(図5)噴門側胃切除術
(図6)幽門保存胃切除術



6−2.リンパ節郭清
 癌の完全切除のためには胃だけを切除するのではなく、周囲のリンパ節の切除(リンパ節郭清)をくわえます。リンパ節転移は癌病巣の近くから始まり、だんだんと離れたリンパ節へと進みます。大きなリンパ節転移は手術中に見て判断できますが、小さなリンパ節転移は肉眼では分りません。手術時には胃周囲のリンパ節を癌の転移しやすい所を中心に郭清します。リンパ節転移が始まっていたとしても癌の原発巣と共に根こそぎ切除するためです。
 胃周囲のリンパ節を癌のごく近傍のもの(1群)からかなり離れたもの(3群)まで分類しています。

(図7)病変周囲のリンパ節、1群から3群
 

リンパ節転移の程度次第で、病変の場所に依らず胃全摘術を選択することもあります。さらにリンパ節郭清を徹底するため、脾臓や膵臓の一部を一緒に切除する場合もあります。

 一方で早期癌では、術中に色素を用いてリンパ流を染め出し、リンパ節郭清範囲を縮小する工夫を行っています。(センチネルリンパ節生検)
 現在私たちの行っている手術は、2群までのリンパ節郭清を基準にしています(定型手術)。
手術が安全にできることを最優先し、患者さんの年齢、体力、合併症などを考慮して、手術を行うか否か(適応)と、切除範囲、郭清範囲を決定します。




6−3.切除後の再建
 部分切除にせよ、胃全摘にせよ、食事摂取のためには再建が必要となります。再建は食事が通ることは勿論、快適な食事ができることを目指し、様々なバリエーションがあります。それぞれの術式ごとに再建法を示します。細かな条件の違いによって、更に様々な再建術式を採用する場合があります。

@ 噴門側胃切除

(図8)空腸間置法
(図9)回結腸間置法

A 幽門側胃切除
(図10)ビルロートT法
(図11)ビルロートU法
(図12)ルーワイ法

B 胃全摘術
(図13)ルーワイ法
(図14)空腸間置法
(図15)回結腸間置法

C幽門保存胃切除術
(図16)ビルロートT法



6−4.胃癌術後の状態
 手術後は数日間、様々な管、コードなどが体につきます。全て必要最低限のものです、抜かないように、外さないようにしてください。
(図17)

ドレーンは1本も入らないことから、3本程度まで入ることもあります。




6−5.術後経過
 順調に経過した場合は術後一定期間の後に造影検査をおこない、縫合不全がなければ食事を開始します。絶食期間は手術によって多少異なります。
幽門側胃切除術 術後3日
噴門側胃切除術 術後5日
胃全摘術 術後5日
 食事開始後、原則的に2日ずつ食事内容が上がっていきます。
  流動食(おもゆ)
  五部粥(ゆるいお粥)
  全粥(普通のお粥)
 食事の練習が終わったところで、術後治療の必要のない方は退院。術後治療が必要と判断され御本人が同意された方は引続き治療に入ります。



6−6.典型的ではない手術
 典型的な手術ができないことがあります。
遠隔転移(肝転移、骨転移、肺転移、脳転移など)がある場合、直接他臓器に浸潤(膵浸潤、肝浸潤)している場合、癌が腹腔内にばらまかれ広がっている(腹膜播種)場合、リンパ節転移が非常に広範囲に及んでいる場合などです。あるいは高度の合併症などの全身状態により定型的手術の危険性が高いと判断される場合もあります。

姑息的切除 出血や食べ物の通過障害改善のために、癌病巣のみを切除することです。
バイパス術 癌病巣が切除できないために、食事の通過のために胃と小腸、あるいは食道と小腸をつなぎます。